温泉だけじゃない! また行きたくなる雲仙おすすめプラン
今回の旅の目的地は雲仙温泉。標高700mの雲仙天草国立公園内にあり、開湯は701年と歴史ある温泉街なんです。自然も豊かで、春は愛らしいツツジ、夏はまばゆい新緑、秋は美しい紅葉、冬は幻想的な霧氷と季節を追って出かける楽しみもあります。
王道の過ごし方もいいけれど、雲仙に詳しいオーナーが営むゲストハウスに宿泊したり、E-bikeに乗ってお散歩気分で町を探検したり。新しい魅力に触れて、訪れるたびにどんどん好きになる。そんな雲仙の楽しみ方を教えちゃいます。
■長崎空港からレンタカーで雲仙温泉へ 期間限定の直通バスも
長崎空港周辺でレンタカーを借り、まず目指すのは長崎自動車道の大村IC。長崎空港から県道38号、国道444号を経由し10分ほどで到着。分岐を「長崎方面」へ進み、諫早ICで降ります(470円)。「雲仙」の標識を頼りに、そのまま自動車専用の「島原道路」を通って長野ICへ。ちなみに、島原道路は無料で通行できます。
ここからは県道125号、国道57号とのどかなローカル線を20分ほどひたすら走り、第一ポイントとなる「愛野展望台」を目指します。ところどころに出てくる「雲仙」の標識を見逃さなければ大丈夫!長崎空港からここまでは50分ほどで到着です。
慣れない道を運転するのは疲れるもの。駐車場完備、お土産店や飲食店もある愛野展望台でひと休みしましょう!
眼下に波穏やかな橘湾が広がり、南東には雲仙岳も見えます。ぐぐっと背伸びして深呼吸。心がふっと軽くなり、ワクワク感が高まってきました~。
ここからはほぼ一本道。引き続き、国道57号を進みます。15分ほど走ると、ぱっと視界が開け、右手に海が見えてきました。さっき立ち寄った愛野展望台から見下ろしていた橘湾です。
さらに5分ほど進むと「小浜温泉」に到着。もくもくと立ち上る白い湯けむりに旅情が高まります。窓を開けると温泉の香りがぷ~ん。これから向かう雲仙が「山」の温泉街なのに対し、こちらは「海」の温泉街として人気があります。
お目当ての雲仙温泉まであと少し。「雲仙西登山口」交差点を左方向へ。ここからしばらく上り坂が続きます。初めのうちはカーブもゆるやか。緑深くなるにつれて「急カーブあり」の標識が現れ、次第にくねくねとした急カーブが!!!!!
運転にはくれぐれもお気をつけくださいませ~。
長崎空港から1時間30分ほどで雲仙温泉に到着。ちょっぴりレトロな建物や看板に胸がきゅんと高鳴ります。さすがは標高700m。窓を開けると、硫黄の香りとともにひんやりとした空気が流れ込んできます。体感ですが、下界より5℃ぐらい低いような。秋冬はぐっと冷え込むので、普段の服装にプラス1枚重ねた暖かい格好がおすすめです。
ちなみに、運転がちょっと苦手だったり、景色を楽しみたいという方には、長崎空港から諫早駅西口を経由して、小浜温泉・雲仙温泉までをつなぐバス「湯けむりスーパーライナー」がおすすめ。毎日運行していて片道1000円ととてもお得です。2023年2月28日までの期間限定なので、ぜひ利用してみてくださいね。
Information
名称 | 湯けむりスーパーライナー(長崎空港~諫早駅西口~小浜温泉・雲仙温泉) |
期間 | 2023年2月28日まで毎日運行(予約制) |
料金 | 片道1000円(大人・小人同額、現金のみ) |
所要 | 小浜温泉75分、雲仙温泉100分 |
電話番号 | 0800-888-1504(長崎バス観光、フリーダイヤル) |
■地元ガイドとめぐる雲仙地獄で新たな発見
まずは今回の宿泊先である「TSUDOI guest house(つどいゲストハウス)」にチェックイン。温泉街の中心部にある「温泉神社」の目の前にある赤いひさしが目印です。
オーナーの市来(いちき)勇人さんは、雲仙に暮らして17年。その知識をいかしたガイド事業も行う雲仙観光のスペシャリストです。そこに暮らす住民の目線で「普段着の雲仙」の様子を案内しています。
荷物を置いたら、温泉街のシンボルである「雲仙地獄」へ。硫黄の香りが立ち込め、蒸気がもうもうと立ち上がる様子から「地獄」と呼ばれています。「湯気注意」なんて標識も雲仙ならでは。市来さんがガイドを務める「ぶらり雲仙地獄ガイド」に参加してきました。
Information
名称 | ぶらり雲仙地獄ガイド |
集合場所 | TSUDOI guest house |
料金 | 1500円(30分前までに電話で予約) |
所要 | 約1時間(悪天候の場合は休み) |
時間 | 午前9時半~、午後2時半~、午後4時~(通年)※時間は応相談 |
電話番号 | 0957-60-4225(TSUDOI guest house) |
散策路が整備され、ダイナミックな地球の営みが感じられる雲仙地獄。成り立ちを聞いたら、どんどん奥へと進んでいきます。
「これ何だかわかりますか」。
市来さんが指さす方向を見ると、小さな実がなっていました。「シャシャンボ」というツツジ科の植物で、和製ブルーベリーと呼ばれているそう。
雲仙は春に咲くミヤマキリシマをはじめ、ツツジ科の植物が多く自生している地域。市来さんは登山ガイドも得意としているため、植物にも詳しいんです。
大小さまざまな地獄が点在する雲仙地獄。そのメインスポットである「お糸地獄」の横には、蒸気で蒸し上げた名物の温泉卵を販売する売店「雲仙地獄工房」があります。「1個食べたら1年長生き、2個食べたら2年長生き、3個食べれば死ぬまで長生き」すると言われているんだとか。
売店の隣には地獄の地熱を体感できる、足湯ならぬ「雲仙地獄足蒸し」も。靴下を脱ぎ、スノコや石板に足を乗せます。観光客にも人気のスポットで、みんなココに座って温泉卵を食べていました。
じんわりと温かさが広がってきて気持ちいい~。この気持ちよさがわかるのか、石畳にごろりと寝転がるネコちゃんの姿も。かわいくて、癒やされます。
雲仙の温泉の泉質は強い酸性の硫黄泉。通路から地獄をよく見ると、噴気孔に黄色い硫黄の結晶が付着しています。
さらに至る所から、ぽこぽこと泥が立ち上がる様子が見られ、まるで生きた火山のジオラマ。あちこちで「地獄の赤ちゃん」を見ることができます。
市来さんに案内してもらったおかげで、ひとりで散策していたらきっと見逃していた小さな発見に気づくことができました。アップダウンが多いので、スニーカーがおすすめです♪
■宿泊者同士の交流も楽しい「TSUDOI guest house」
雲仙温泉街には歴史を重ねてきた旅館や、おしゃれでモダンなホテルなど、宿泊先としていろんな選択肢がありますが、今回はゲストハウスを選択。宿泊費が安く抑えられるという以上に、観光スポットやお店の情報が得やすい、宿泊者同士で交流できるなどというメリットも。旅の新たなスタイルとして若い世代を中心に人気を集めています。
「TSUDOI guest house」は1泊3300円の素泊まりスタイル。1階にはみんなで使う共有のリビングがあります。ポットや電子レンジ、冷蔵庫なども完備。ラフな雰囲気がカフェみたいでかわいいんです。
さらに2階には男女混合ドミトリー(相部屋)、3階には女性専用ドミトリー(相部屋)があり、女性でも安心して宿泊できます。
ごはんはどうするの?というと…。近くのお店から出前を取ってリビングで食べてもいいし、外で食べてきてもいい。ときにはほかの宿泊者と一緒に食材の買い出しに出かけ、外でバーベキューをしたり、寒い時季はお鍋を囲んだり。この自由度の高さはゲストハウスならではです。
もちろん食材費はみんなで割り勘。夕方近くになると、ゲストハウス前の駐車場には、鮮魚の移動販売車もやって来ます。「今日のおすすめは?」など、お店の人と会話しながらの買い物も楽しいんです。
ごはんを食べた後の楽しみもいっぱい。市来さんのおすすめは星空観察。地獄の一つで、現在は活動が落ち着いている「旧八万地獄」に寝っ転がり、地熱を感じながら夜空を眺めるというチルな時間が過ごせます。家の明かりや街灯が少なく、周囲が開けているため、星空観察にもってこいの場所です。
「TSUDOI guest house」には全国各地から、さまざまな世代の宿泊者が訪れます。その目的はさまざま。観光はもちろん、オーナーの市来さんに会いに来るという人も。いろんな出会いが交差するのが、ゲストハウスのいいところです。
ここで出会ったのも何かのご縁。老若男女が自然に会話を交わし、楽しいことやうれしいことなどささいなことも共有して盛り上がります。懐かしさと新しさが交わる、今の雲仙の日常がこの場所にはあります。このご時世で忘れかけていたけれど、心の通った交流がこんなに楽しいなんて!久しぶりの感覚に、つい夜更かししてしまいます。
その中心には、いつも市来さんの笑顔があります。福岡県出身の市来さんは、雲仙の老舗旅館で10年働いた後、7年前に「TSUDOI guest house」をオープン。老舗旅館やホテルが軒を連ねる雲仙。ゲストハウスという、いわば異色の宿泊スタイルに挑戦するには相当な覚悟が必要だったはず。
「人生で一番長く住んでいるのは雲仙。いろんな経験も失敗もしたけどね」
屈託のない笑顔を見せてそう話す市来さん。この人柄こそ、このゲストハウスの何よりの魅力なんだなと感じました。
Information
店名 | TSUDOI guest house(つどいゲストハウス) |
住所 | 雲仙市小浜町雲仙323-2-2 |
電話番号 | 0957-60-4225 |
料金 | 1泊3300円(税・サ込み) |
利用時間 | チェックイン:午後4時、チェックアウト:午前11時 |
ウェブサイト | https://www.unzen-tsudoi.com/ |
■坂道もラクチン! E-bikeで気ままに雲仙散策
「また来ます」。
市来さんに別れを告げ、向かったのは観光案内所を兼ねた「雲仙観光局」。こちらでは今回の旅で楽しみにしていた電動アシスト自転車「E-bike」のレンタルを行っているんです。ヘルメットも一緒に借りられるから安心。
デザインや性能の高さから海外でも評判のE-bike「BESV(ベスビー)」。コンパクトながら高性能バッテリー搭載を搭載し、フル充電で最大90kmの航続ができるんだとか。受付で手続きを済ませたら、スタッフさんがギアの替え方などを説明してくれます。
左ハンドルには、急な坂道などを上るときに使うアシストモードの変更を行うボタンを搭載。右ハンドルには7段階の変速ギアが付いています。さらに中央の液晶パネルには、アシストモードの段階やスピードなどが表示されます。
坂道を上るときはアシストモードを「3」に、逆に下るときは「0」にするといいみたい。液晶パネルの文字も大きいから、運転しながらでも確認しやすい!敷地内で軽く試運転したらいよいよ出発です。
今回のチャリ旅のおともにしたのは、雲仙観光局でゲットした雲仙温泉のイラストマップ付きのパンフレット。観光名所の位置関係がかわいく紹介されています。今後、E-bikeでめぐるモデルコースも整備されていくそうなので、新たな雲仙観光のトレンドとなりそうです。
まずは「TSUDOI guest house」の市来さんに教えてもらった、知る人ぞ知る「蒸釜」へ。蒸釜とは温泉の蒸気を利用した釜で野菜などを蒸す、超エコな調理場のようなもの。地獄のエネルギーがみなぎる雲仙らしい暮らしの知恵ですね。
ここはパンフレットにも載っていない超穴場。駐車場の一角に、ひっそりと隠れていました。使用料は1回250円。この日はたまたま、地元の方がサツマイモを蒸しているところに遭遇。大地の恵みで蒸されてホクホク、おいしそうでした。
次に向かったのは蒸釜から1分の場所にある「おしどりの池」。この日は天気も良く、湖面がエメラルドグリーンにきらめく美しい風景が見られました。池の周辺には遊歩道が整備されているので、のんびりお散歩するのも気持ちがよさそうです。
初めは不安だったE-bikeの運転。少しずつコツをつかんできたので、坂道にチャレンジ!長崎県内でも有名な仁田峠の紅葉を眺めてみようと、仁田峠循環道路の手前まで行ってみることに。急な上り坂が続くため、ちょっぴり不安でしたが、電動アシストのおかげですいすい進みました。
上の写真の左奥に見えるのが仁田峠。ロープウェイがある展望所まで、このE-bikeで行けるそうです。温泉街からは約16㎞、所要時間は120分。仁田峠循環道路を上ると、四季折々のさまざまな“表情”をより近くで楽しむことができます。
※仁田峠循環道路は一方通行です。E-bikeをご利用の際は運転に十分お気を付けくださいね。
帰り道、気持ちよく風を切って走っていると、「長崎かすてら 出島屋」の店先で甘い誘惑が~。「カステラ切れはしあります」。この看板が出ているときにしか買えないらしく、たっぷり入って1袋500円。しっとり甘く、出会えたらラッキー!のレアものです。
こんな小さな看板に気づけるのも自転車ならでは。徒歩よりも行動範囲が広がるし、自動車よりも視野が広がるし、まさにいいとこ取り!毎日忙しくしていると、その小さな心の動きを見失ってしまいがち。旅に出るとその心の感度が取り戻せる気がします。
1時間ほどの気ままなチャリ旅でしたが、気持ちも切り替わってすっきり。思ってもみなかった「小さな幸せ」に気づけるE-bikeおすすめですよ!雲仙観光局が提案するモデルコースもチェックしてみてくださいね。
Information
E-bike 貸し出し場所 | 雲仙観光局(10台)雲仙BASE(5台)雲仙ゴルフ場(3台) H.U.B雲仙(2台)雲仙福田屋(4台)雲仙よか湯(6台) |
料金 | 1時間1500円、3時間3000円 |
ウェブサイト | https://find.unzen.org/ |
楽しい時間はあっという間。「また来よう」と心の中で誓い、雲仙温泉を後にします。長崎空港へ向かう帰り道、行きがけに気になっていた観光施設「千々石(ちぢわ)観光センター」へ。ドライブ途中の立ち寄りスポットして人気がある場所です。
お目当ては名物の「じゃがちゃん」1本250円。長崎特産のジャガイモを丸ごと蒸し、ちょっと甘めの衣をつけて揚げたもの。ちなみに雲仙市は、市町村単位の生産高が日本一。「ジャガイモの聖地」なんです。
外はカリッと、中はホクホク。シンプルだけどクセになる味わいがたまりません。
行く先々で驚いたり、感動したり、うれしくなったり。心の奥を小さくノックしてくれるような、すてきな出会いに満ちた雲仙への1泊2日旅。日々の中にそっと落ちている、「いい1日のきっかけ」を探しに出かけてみませんか。
■コワーキングスペースとしても利用できるコミュニティ拠点「雲仙BASE」
雲仙の町と人の魅力にハマった人に、ぜひ行ってほしいスポットがまだまだ。その一つが、E-bikeの貸出場所にもなっている「雲仙BASE」です。ココは雲仙温泉街唯一の小学校として、地域の人に親しまれてきた旧雲仙小中学校を活用した「ヒト・モノ・コトをつなぐ交流コミュニティ拠点」。雲仙温泉に滞在しながら仕事をしたり、訪れた人や地元の人が新しい何かに出会えたり。さまざまな使い方を提案しています。
かつての職員室はビジネスルームに。コワーキングスペースとしてWi-Fiや複合機などの設備が充実。WEBカメラをはじめ備品のレンタルもできます。また週末を中心に、マルシェなどの楽しいイベントも開催されているそうです。
Information
名称 | 雲仙BASE |
住所 | 雲仙市小浜町雲仙386 |
営業時間 | 午前10時~午後5時 |
休み | 火水木曜 |
ウェブサイト | https://www.unzen.org/unzen_base/ |
■地元産食材にこだわり 小浜温泉のダイニングバー「Lion-J」
雲仙温泉がある雲仙市には、もうひとつ「小浜温泉」という泉質が異なる海辺の温泉地があります。この町にも、さまざまな人が集まる止まり木のような場所が。お店の名前は「Lion-J(ライオンジェイ)」。オーナーの獅子島薫さんが営むダイニングバーです。
地元の人も観光客も。知らない人同士がこの店で出会って、一緒に話をして盛り上がる。そんな楽しい光景が夜な夜な繰り広げられています。
料理へのアプローチも情熱的。野菜もフルーツも、魚も肉も、島原半島産の食材を使いながら、和洋さまざまな料理で楽しませてくれます。ときには規格外のかんきつ類などを生産者から買い取り、ノンアルコールドリンクや料理に活用。
「地元に住んでいるからこそのローカルな魅力を発信したい」と獅子島さん。ぜひ足を運んでみてください。
Information
店名 | Lion-J(ライオンジェイ) |
住所 | 雲仙市小浜町北本町2 |
電話番号 | 0957-73-6811 |
営業時間 | 午後6時半~深夜1時 |
定休日 | 不定休 |