小ケ倉ダム(長崎市)身近な歴史遺産「登録文化財」巡り

更新日
2024.02.28
情報提供
長崎新聞
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 街の喧騒(けんそう)から離れた山あいにそびえる小ケ倉ダム(長崎市上戸町4丁目)。市が約6年をかけて建設し、1926(大正15)年完成。合併による市域拡大や人口増加に対応するためだった。2010年に小ケ倉ダム管理橋と共に文化財登録。行政の資料では「市の上下水道技術の到達点」と価値付けられている。立派な建造物なのだろうが、どうもぴんとこない。そこで近代化遺産に詳しい長崎大名誉教授、岡林隆敏さんと現地を訪ね、このダムの魅力を教えてもらった。

駐車場からダムに向かう遊歩道。建設時は資材を運ぶために使われたそうだ。沿道に古い石垣が連なる。鳥の鳴き声や小川のせせらぎを聞きつつ、歩を進めた。「春は桜、夏はホタル、秋は紅葉の見物客でにぎわうよ」と岡林さん。冬は冬で、澄んだ空気が心地よい。

200メートルほど歩き、鹿尾川に架かる管理橋(鉄筋コンクリート製、長さ8・5メートル)を渡ると、黒く巨大なダムの壁が姿を現した。

高さ41・2メートル、幅135・6メートル、貯水量190万立方メートル。間近だと存在感たっぷり。壁の横断面は上になるほど薄く、細長い三角形のような形状という。「日本最初期の鉄筋コンクリート製ダム。鉄筋で強度が増して水圧に耐えられるようになり、従来より薄く造ることができた」と岡林さん。

貯水池からあふれた水を排出する壁上部の「余水吐(よすいばけ)」や管理橋などに装飾的な彫り込みや凸凹が見られる。明治期に多用された曲線の多い凝ったデザインとは異なり、基本的に直線的な装飾。すっきりとしていて現代的だ。「細部にも変化をつけている。設計者や職人のこだわりだろう」

ダム正面の真下に近づいた。巨大な壁面の石材は、国会議事堂にも使用されている山口県徳山産の御影石。職人が手作業で切り出して加工したため一つ一つの陰影が異なり、武骨な温かみを感じる。

「今はコケで覆われているけれど、当時は月光を反射するほど白かったらしい。高圧洗浄機できれいにして、プロジェクションマッピングをやっても面白そう」。岡林さんは壁を見上げ、そんな夢も語った。


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